荷重、姿勢

運動連鎖

1つの動作を行おうとして1つの関節、例えばつま先立ちをする為に足の指をそる動作をすればその近くの関節たちもその動きに連動していくこと、これが運動連鎖となります。
 野球のピッチャーにとって、もっとも効果的にボールに力を伝える為の運動連鎖、テニスのサーブの時の運動連鎖、相撲取りの低い立ち合いの際の運動連鎖など、正しいフォームで最も効率的な動きを達成させるためにアスリートやその他、体を使ってパフォーマンスをする方々は日々、基礎的な動作をしてそれぞれの運動連鎖をオートマチックに行うようにしていきます。

 しかし、それはなにもアスリートたちだけに当てはまるわけではありません。先ほども例に挙げたようにつま先立ちや、もっと言ってしまえば、日常の全ての動きは運動連鎖が必ず起きています。そして、この運動連鎖が崩れる事も良くあります。その崩れが日常化し、慢性的な負担を体のどこかにかけることで、場合によっては肩こり、慢性腰痛、膝の痛みなど確たる原因を自分で見つけられず、しかし、症状として体に現れていくことが非常に多いです。

姿勢チェック

簡単なチェックをしてみましょう。とりあえず何も考えずにまっすぐに立ってみてください。今、足の裏のどこに体重が乗っていますか?かかと寄り、つま先寄り、小指側、親指側それぞれ感じてみてください。それと共に膝はのびていますか?腰は反っていますか?それともまっすぐでしょうか?

 チェックしていただいたら今から、足から骨盤までの連鎖を書きます。ただ、解剖学用語もあるので、そのあとの図を参考にしてください。


・距骨下関節(足首)回内(外反)→膝関節屈曲・外転(外反)・内旋→股関節屈曲・内転・内旋→骨盤前傾・前方回旋



 特に図では足首の動きを拡大してますが、なかなか回内や外反と書いてもイメージしづらいと思いますが、図のように足のアーチが落ちて親指側に体重が乗っている事が多いです。
 同様に足首が逆にねじられている事を回外(内反)と言います。こちらの連鎖は、

・距骨下関節(足首)回外(内反)→膝関節伸展・内転(内反)・外旋→股関節伸展・外転・外旋→骨盤後傾・後方回旋
 以上となっていて、図では、

 

足の外側荷重と内側荷重


上で示されているのは一般的な足の動きから来る膝や股関節、骨盤への一連の連鎖を書いてあります。足のアーチが落ちる(足首の回内)と、膝は内側に入りやすく、股関節も曲がり、それにともなって骨盤も前に傾きます。これによって腰は反り腰へと変化していきます。
足の外側に体重がかかりやすくなると、膝が外に開き、股関節は外に向き、骨盤は後に傾きます。

ちなみに、骨盤動きで分かりづらいのが前傾・後傾と前方回旋・後方回旋ですが、これは体を横から見た時に腰が前に傾いていると前傾、お尻が落ちるように後に傾くと後傾。そして、骨盤を上から見た際に右の腰骨が前にでていると右骨盤の前方回旋もしくは骨盤の左回旋、右の腰骨が後に移動していると右の骨盤の後方回旋または、骨盤の右回旋という表現になります。この回旋動作は歩いている時に常に出ています。右足を一歩前に出すと右の骨盤もそれに伴って前に出ます。これは前方回旋ですね。そして左足が一歩前に出ると右の骨盤は後に回旋しますので後方回旋となります。

 

 図の左側は上から骨盤を見た図(=前方回旋は青で示されています。また後方回旋は赤で示されています。)、右側のイラストは骨盤を横から見た図(=黄色は前傾、緑は後傾を示しています)

 立っている時に自分の体のポジションの特徴をとらえておくと、どこに負担がかかりやすくなるのかを知る手がかりになります。静止して立っている姿勢と歩くなどの動作に伴う姿勢と運動連鎖の異常を診ることで、なぜ、慢性的な症状に悩まされるのかが分かり、治療アプローチの手助けになります。
自分自身でチェックするとともに、今通われている治療院などでご自身の姿勢の傾向を把握してみるといいと思います。

*今回紹介した運動連鎖は、足の位置によって骨盤にどういう影響を与えるかという事を示しました。この他にも骨盤の位置の異常が足や重心にどの様な負担をかけるのかという下方向への運動連鎖もあります。同じようで、膝に出てくる負担は逆になる部分もあり、それも治療家にとっては判断材料ですが、今日の内容が少し複雑でしたのでその運動連鎖は割愛しました。