産後(妊娠中も)の骨盤は大きな変化にさらされています。それはすべて産道形成のための変化ですが、産後の骨盤をケアすることで妊娠前の体形に戻しやすくなったり、腰痛の予防につながるためできる範囲での骨盤ケアは必要ではないかと思います。
骨盤
骨盤は左右の寛骨、真ん中にある仙骨、仙骨の下にある尾骨を合わせた総称です。特に妊娠後期に大きく影響を受けるのが仙腸関節と恥骨結合となります。
妊娠中の骨盤
妊娠中は骨盤の変化が最も多い時期と言えます。それは、胎児が大きくなることによる影響もありますが、ペプチドホルモンの1つでリラキシン(レラキシン)というホルモンの働きが骨盤の安定性に影響を与えます。
骨盤を安定させる要素は様々ですが、直接的に関節を安定させる組織として、靭帯というものがあります。骨盤にはこの靭帯が数多くあり、通常上半身の体重を骨盤で受け止め下半身に分散させたり、下半身からの力を上半身に伝えたりしています。そのために数多くの靭帯が関節を守り、安定させています。
妊娠3か月目くらいから先ほどのリラキシンが分泌されるのですが、これは一言でいえば、「靭帯を緩めるホルモン」と言えます。
このホルモンの作用によって上の図の恥骨結合にある靭帯や仙腸関節に関係する靭帯は緩まり、産道が形成されやすくしています。
リラキシンはいつからいつまで
先ほど書いたように、リラキシンは妊娠3か月目くらいから産後およそ2か月まで影響を与え続けます。
産道を胎児が通過することでリラキシンの分泌はおさまり始め、逆に靭帯の緊張を回復させるためのオキシトシンというホルモンが分泌し始めます。
このリラキシンの作用が体に及ぼしている期間は骨盤を安定させる必要が高まっています。だからこそ、今は専用のベルトがありますが、少し前はさらしを巻いて骨盤を安定させることが必要でした。産後のベルトも種類によって産後直後から使えるものから産後2週間ほどしてから使えるものまでありますので、用途を把握して使ってください。
産後の骨盤ケアはいつから?
産後の骨盤ケアは分娩時に受けた骨盤の変化を良い状態に戻す目的と妊娠中に起きた姿勢の変化によって緊張した筋肉と、逆に弱くなった筋肉のバランスを整える目的があります。
産後に骨盤が不安定なのは事実ですが、普段の姿勢不良も骨盤には大きな影響を与えます。骨盤だけを診るケアではなく、全身のケアを合わせて行っていくことが重要です。
出産直後は非常に骨盤の安定性が悪く、これが、産後6か月から9か月ほどかけて通常の骨盤の状態に徐々に戻っていきます。とくに戻り始めるのは産後2か月目からです。もちろん状態次第ですが、出産直後の1か月は母体の健康状態も万全ではありません。出産して、すぐに育児が始まるわけで、その間、様々な生活の変化の中で体も変化をしていきます。その間は、無理に骨盤ケアをしなくても、先ほど書いた骨盤ベルトの利用で安定させることが重要ではないかと考えています。
そこで当院では産後2か月目から骨盤ケアを開始することが多いです。
ちなみに、骨盤ベルトは着用位置をしっかりと守ってください。時折ベルトが骨盤ではなく、その上の腰の筋肉周りに巻いているケースがあります。これはかえって産道を開くような圧が加わります。