朝食を食べる?食べない?

皆さんは朝食をしっかりと摂っていますか?それとも摂らないですか?

健康のアドバイスをする際に、食事の事を治療院で話す事も多くあります。決まり文句のように「バランスの良い食事を」という言葉を出す事もあります。このバランスというのは多くの場合、栄養素時にバランスを考えるという事が基本になっています。たんぱく質、脂質、糖質、ミネラル、ビタミン、食物繊維、水、これらをいかに「バランス良く」摂るかは重要です。

書店、ネット、口コミ様々に「健康になる為の食事に関係する本」を見つける事が出来ます。どれも筋が通ってそうな事が書かれています。しかし、それらの情報が多ければ多いほど、絶対的にこれが正しいという食べ方が確立されていない事を示しているように思います。結局、結論から書くと、自分の判断という事にたどり着くわけです。その判断には施術者としてNOを突き付けることは出来ないですし、小さな改善点をお伝えするにとどまっているのも現状です。

今回のテーマは「朝食」です。健康になりたいのであれば朝食は食べるべきではないという意見が少なからず出てきていますので、その点を書いてみようと思います。

朝は排泄の時間

朝食を食べない方には、朝をこのように定義している方もいらっしゃいます。排泄がうまくいっている方が、腸の環境の良くなりますし、排泄を決まった時間帯に出来ることは素晴らしい事です。では、なぜ朝は排泄の時間なのでしょうか。これには食べ物の消化と吸収の時間が関係します。

食べたものが液体なのか、固体なのかに(脂分が多い食事かなども)よってこの時間には差が出てきますが、おおよそ上の図のようにそれぞれの内臓でとどまる時間が出されています。これから、食べたものが排泄されるまでに18時間弱から35時間強が必要となります。つまり前回食べた物を排泄するためには最低でも18時間は必要となります。

なぜ朝は排泄の時間なのか、例えば前回の食事、つまり前日の夕食を19時に食べたと仮定したら、それが排泄されるには18時間は必要なわけですから、13時がタイミングとなります。この理屈で行くと朝の排泄は前日の昼過ぎに食べたものが排泄されるタイミングとなる可能性があります。

もし朝食を食べてしまうと内臓、とりわけ胃が働かなくてはならなくなり、せっかくの消化吸収、排泄に全能力をささげようとしている所に余計な負担がかかります。また胃が刺激を受けると腸が活動的になります。内臓だって絶えず働くよりも少し休みたい、でも13食食べるとどうしても、消化から排泄までの時間が足りなくなってしまいます。そこで、朝食を食べないようにすることで、内臓も休まり、消化から排泄までをスムーズにできるようになるという考え方です

モチリン

モチリンというのは小腸から出される消化管ホルモンです。お腹がすいた時等にお腹が鳴るという経験はあると思いますが、それを出しているのがこのモチリンというホルモンです。これが働くと、胃から盲腸の前(小腸の最後まで)を収縮させることになります。この収縮時の音がお腹の音になります。そして、この収縮が腸の働きを活性化させて便通をよりスムーズにしてくれます。

このモチリンは、食事をしてからおよそ8時間空かないと分泌が促されない事が分かっています。先ほどの例で19時に食べたら、午前3時くらいから分泌が促されることになります。食べ物の通過時間にしたら、丁度小腸に到達した頃からという事になります。朝食を摂らない事によって、モチリンの働きが最大限活かされるようになり(胃から盲腸までの収縮は約100分間隔で起きます)、スムーズな排泄を促せ、結果として胃腸の負担を抑え腸内環境も整える機会が生まれる、これが朝食を摂らないことのメリットと言えます。

朝食を食べる事のメリット

朝食を食べる事で排泄がうまくいくと考えている方もいらっしゃいます。確かに、身体の反射の1つに、胃腸反射があります。食べ物が胃に入ることで胃壁が伸ばされ、それが腸に伝わり蠕動運動が活発になるというものです。

また、朝食を食べることで脳や筋肉のエネルギー源であるブドウ糖を供給できて、集中力と活動力につながる。力が発揮しやすくなるというのも朝食を食べる意義と考えられていると思います。

エネルギー源ですが、朝食を食べることで脳や筋肉のエネルギー源であるブドウ糖が供給され、午前から頭が良く働くということですが、確かに脳や筋肉においてそのエネルギー源はブドウ糖です。しかし、脳において朝食からブドウ糖が供給されないとβ-ヒドロキシ酪酸が50%、α-アミノ窒素が10%、アセト酢酸が10%、ブドウ糖が30%の割合でエネルギー源になると言われています。

聞き慣れない言葉が並びましたが、ケトン体という言葉はいかがでしょうか?β-ヒドロキシ酪酸、アセト酢酸がケトン体と呼ばれるものです。これは体内で脂質やアミノ酸の分解時に生まれてくる物質ですが、今まで、脳のエネルギー源はブドウ糖と言われていました。これはこれで間違えがないのですが、最近ではケトン体もエネルギー源となる事が分かってきています。もともと、脳に至る血管には関所(脳血液関門)があり、ブドウ糖はそこを通りぬけられるが脂肪酸は通り抜けられない、だからブドウ糖がエネルギー源と言われていました。しかし、この関所をケトン体も通り抜けられることが分かってきました。そして、極端な例では断食を行った際には脳のエネルギー源の60%がケトン体であったという事も出てきています。また、筋肉もケトン体をエネルギー源として活用できます。

だからブドウ糖は供給されなくてもいい、これも極端な話です。もちろん、供給されなくても体ではブドウ糖を作り出す事ができます(これを糖新生といいます)。しかし、それを作り出すのも、様々な栄養素ですので、ブドウ糖を作り出す材料供給の意味でも食事には意味があります。また、ケトン体は酸性物質ですので、こればかりを利用することはできません。身体は極端にアルカリ性でも酸性でもその機能を停止してしまいます。要は、朝食を摂らなくても昼食や夕食からそれらを確保しておくことで問題はないという考え方があるのだと思います。

朝食を食べる事に意味があるかもしれませんが、朝食を食べない事でも補完できるという事も言えます。

まとめ

朝食を食べない事によるメリットは、「内臓を休める時間を確保」したり、「排泄時間帯に胃を過度に働かせない」事につながったり、「モチリンの分泌を十分行わせる」事ができるなど、内臓のリズムとしては非常に有効であると言えます。

朝食を食べるメリットは、エネルギー源を摂取することができ、胃を刺激することで腸の働きを反射的に働かせることができるというものです。

この2つを比較してどちらを選択するかは個人の判断だと思います。生活のリズムとして朝食を食べたほうが調子が良いのに理屈から朝食を摂らないというのはナンセンスです。ただ、朝食を含め、1日3食バランスよく食べるという既成概念を変えてみる事でも健康へのセルフケア方法になることもあるという点は言えそうです。

もし朝食を食べない生活をしてみようと考えた方がいれば、「何事も急激にはやらない」ことが大切です。全く食べないのではなく、果物だけは食べてみるなど食事の内容を変化させて徐々にやってみてください。これまで食べていた方が急に食べなくなれば体力面で辛くなるのは当然ですので。

白湯のすすめ

白湯は消化能力を支えるという考えはアーユルヴェーダからの考えです。対して薬膳的な食養生という視点では白湯でも過度な水分摂取は「水毒」となるという考えもあります。これらを踏まえて白湯を活用するという事はお勧めできます。

白湯の作り方

白湯はぬるま湯ではありません。湯が白湯になるためには3つの要素が必要であるとアーユルヴェーダでは考えます。その3つとは「火」「水」「風」です。

「水」を「火」で沸騰させることで水に火の要素を入れます。そして沸騰したら弱火にしてブクブクと気泡がある状態を15分ほど持続させます。この気泡を持続させる中で「風」という要素を加えていきます。

こうしてできた沸騰しているお湯を適温まで自然に冷まして飲むものを白湯と言います。沸騰しているものに水で冷ますと結局今まで入った「火」や「風」の要素は失われますので、自然に冷ましてください。また作った白湯は1日たったら捨てて新しい白湯を作るようにしてください。

適温

50°位とされます。飲んでみて少し熱いと感じるくらいが胃腸には優しい温度となります。特に冷え性などに悩んでいる方は冷ましすぎずに適温で飲んでください。作った白湯を適温にして魔法瓶などにいれ持ち歩き好きな時に飲むと良いと思います。

飲み方

一気飲みはしないようにしてください。普段使っているコップなりマグカップなりでよいので一口一口ゆっくりと飲んでいただくようにしてみてください。

食事というものは健康の基本要素の1つです。普段の食事を朝食だけでなく見直してみるきっかけにしていただけると良いと思います。