前回は幼児の疳の虫について書きました。今回は、幼児への鍼施術について書いてみます。
幼児への鍼施術に関しては、大人の方と同じように鍼を体に刺すこともありますが、それとは別に小児鍼として刺さない鍼を使用して体表部へ軽度の刺激を与えることで調整する方法があります。
これらは刺さない鍼です。とがっている部分や小さな突起部分、丸くなっている部分を用いて皮膚に刺激を与えます。
幼児の体調を知る
幼児はとかく言葉を話せなかったり、話せてもなかなか要領を得ない場合が多くあります。つまり問診ができないような状況です。このようなケースでは、例えばお腹の張りを診たり(腹診)、打診として体の変調を見極めるという事が行われます。
また見ることで病の勢いを知る方法もあります。人差し指の静脈を見るという方法で、虎口三関の脈と言われています。古くは「鍼灸大成」という古典や日本では「鍼灸重宝記」という文献にみることができます。
対象は6歳くらいまで。なかなか自分の体調を上手に伝えられない乳幼児の診立てに使う事の出来る脈診ですが、脈診は本来は触れてその強さや状態を診るものですが、この「虎口三関の脈」は先ほど書いたように見て判断するものです。場所は男の子であれば左の人差し指、女の子であれば右の人差し指となります。
人差し指の関節の節にそれぞれ「風関」「気関」「命関」と当てはめているので「三関」となります。図の青いラインが血管ですが、お子様の状態が宜しくない時にここに浮きでる脈の状態を見て身体の状態を知る手立てになります。
血管の浮き出ているラインが風関まででしたら、病は浅く治りやすい、気関まで到達していたら病は進行していて重い状態、そして命関まででしたら病は深く進行し治すことが困難であるという判断をします。またその色からも体の変化を見ることになりますが、まずはどのあたりまで血管が伸びているかだけでも確認してください。
子供が一見元気そうでも、静脈が長く伸びていたら、注意深く体調を確認していくことで急な体調の変化を見過ごさなくなるかもしれません。
日々のお子様の体調をみることに加えて、小児の養生に関係するツボもあります。
小児に関係するツボ
ツボは本来、東洋医学的な証(現代医学の診断と同じ意味です)を望診、聞診、問診、切診を通して決め、そこから最適なツボを選んで施術していくことになります。これは小児に対しても基本的には一緒です。しかし、小児においては基本的に重要なツボというものも存在しています。それが身柱(しんちゅう)というツボです。
身柱は、胸椎という胸の部分の背骨の上から3番目、4番目の間にあるツボです。なかなかわかりづらいので、ざっくり上の図で左右の肩甲骨の間で上の方にあります。「ちりけ」とも言われ、ここにお灸をすることで小児の養生法にもなります(ちりけの灸)。ご自宅でやる場合はドライヤーやさするだけでもいいです。
また、小児斜差(すじかい)の灸として、男児は左の肝兪と右の脾兪、女児は右の肝兪と左の脾兪に対してお灸をすることで主には疳の虫に対して効果があるとされています。
お灸をすえるのは難しいと思いますので、上の図のツボに対して、手でさすってあげるだけでも構いません。抱っこしながら背中をトントン叩く流れで、ツボを意識して叩いてみるのも良いでしょう。スキンシップを図りながら気軽にお子様の養生をするきっかけになるとよいですね。
次回はご自宅でできる小児鍼をお伝えします。