天気と東洋医学

前回、前々回と気象病について書いてきました。気象病においては内耳にあるとされる気圧センサーに急激な気圧の変化によって負荷がかかることによって自律神経の乱れを生じさせ、また視覚からの情報との差がめまいを引き起こしてしまったり、交感神経の過敏な状態が痛みを増悪させるという視点で、気象病の対策に自律神経の調整を行うことが重要ですという事でした。

今回は、天気を東洋医学という視点で書いてみようと思います。

五悪

東洋医学では、五臓(肝、心、脾、肺、腎)に代表されるように自然界を5つに分ける考え方があります。

上の図は五行色体表(ごぎょうしきたいひょう)と言われるもので、それぞれの関連性を表にしたものです。例えば五臓の肝において、五志は感情についてですが、肝が病むと怒りっぽくなる、または怒りすぎると肝を痛めるという関係性があります。

この中で体外環境による要因で五臓を痛めるものを外因といいますが、この外因のなかで上の図の五悪が気候による影響という事になります。風・熱(暑)・湿・燥・寒これらは天気や季節に影響を受けています。これだけでは問題はそれほど多くない(五気という状態です)のですが、過ぎた状態というのは体にとって害をもたらします(五気が過ぎることで害をもたらし、五悪となります)。五気に「邪」をつけ、風邪、暑邪、湿邪、燥邪、寒邪となるとそれぞれの臓器を痛めることになります。

暑邪(熱邪)

暑邪にはいくつか特徴があります。

・熱性

 暑邪は真夏の暑い日などに現れることが多く、熱中症の症状がでます。

・開泄

 開泄とは発散することを意味します。暑邪が表(肌)をおかすと汗孔が開き、汗が大量に漏れていきます。

・気、津液を消耗

 暑邪は気や津液を消耗(汗とともに出ていくため)し、喉の渇きや、皮膚の乾燥、疲労感をもたらします。

・湿邪と結びつきやすい

 暑邪は湿邪と結びつきやすくなり、このような状態を暑湿と言います。湿は重い性質がありますので、手足の重だるさ、食欲不振、嘔吐、尿の色が濃く少ないなどの症状につながります。

このような特徴を持つ暑邪の病証は、自汗(汗が止まらない)、体が熱い、顔が赤い、口が乾くなどです。

暑邪対策

暑邪に対しては、食事、運動などできることがいくつかあります。

・食事

食事に関しては、できるだけ涼性のものを摂るように心がけることが大事です。涼性の食べ物は体にこもっている熱を冷ます作用のある食べ物です。とはいえ、アイスや冷たい飲み物などは胃腸を冷やしすぎかえって体に負担をかけてしまいます。

涼性の食べ物

野菜…セロリ、ナス、きゅうり、白菜、ほうれん草、春菊、竹の子など

穀物…そば、緑豆、ハト麦など

海藻…のり、昆布、寒天など

果物…キウイ、バナナ、スイカ、レモン、ナシ、トマトなど

肉類…あさり、しじみ、たこなど

酸味のあるものは収れん作用があり、毛穴を閉じる作用が期待できます。これによって汗のかきすぎになります。レモンや梅干し、ラッキョウなどです。この酸味と甘味のあるものを組み合わせることで潤いを生み出すことができます。これを酸甘化陰と言います。ごはんと梅干などの組み合わせは代表的なものの1つです。

・運動

暑邪によって汗が大量に漏れ出ることは健康に害をもたらしますが、汗をかかないことも熱を体にとどめるために害になります。日中は避け、朝や夕方などに軽いウォーキングなどをすることは大切です。

夏の養生は秋への準備です。汗を発散させるべき時に発散させておかないと、その熱が体にたまります。また陽気である暑(熱)は同じ陽である心や肺に負担をかけ、心を悪くしたり、肺に溜まれば空咳などにつながります。逆に夏の汗を秋になっても発散し続ければ風邪の影響を受けやすくなり肺に負担をかけます。

しっかりと養生して、夏を乗り切ってください。